開出今移民物語  序説

 

明治中葉から大正年間にかけて「出稼ぎ」を目的とした北米移民 が激増し、一時は開出今の各戸殆んどがその移民者を出している。

 たとえ自家から移民者の出ていない家でも、親戚その他の影響を受けない家がない程の隆盛さであった。そのために、開出今の経済基盤や思想も一変してしまう程であった。

 そしてその影響は悪い方向には決して向かわないで、現在の開出今形成の土台となり、心理的にも物資的にも良い効果が表れた。激しい現代社会においても、決して他にひけを取らずに立ち向かっていく芯の強さが養われて、豊かで平和な安定した生活を享受している今日の開出今を見ることが出来る。

 しかし現在の開出今にとって、それ程大きな影響を及ぼした「北米移民」も、決して開出今だけの孤立した行ではなかった。時代の流れによって必然的に起こった象を的確にとらえ、それを勇敢に実行した当時の若い人の意気が然らしめたのだと思う。その「時代の流れ」がどんな背景を持っていたのかを考えることから始め、開出今の移民の過ぎ起こしを追って行きたいと思う。