開出今移民物語  開出今移民のはじめ

 

開出今の海外渡航者の始まりが何年頃か、誰がその第一号あるかを知りたくて色々と探索を続けてきた。亡くなった西崎文四郎さんに聞いたのは「早川織右ェ門氏が明治十八年にハワイへ渡ったのだ、この人が第一号だ。」との話だったが、これを裏付けるように、確かに早川織右ェ門氏(当時35歳)が、明治十八年六月政府の契約移民としてハワイへ渡航した記録が、外務省の旅券下付の綴りから発見されている。同じ明治十八年六月開出今ではもう一人西村彦次郎氏(当時30歳)がハワイへの旅券下付を受けた記録が保存されているので、この二人が開出今での先達でることは確実と思える

 これはカナダ移民の研究に力を入れておられる龍谷大学経営学部助教授・福田徹氏が、外務省外交史料館にある「海外旅券下付返納表進達一件」なるファイルを調査研究されて、その各種資料のうち、「旅券下付者一覧表」の「開出今の項」その他を福田氏のご好意によって特に私にご提供下さったので判明した訳である。

 そして明治二十五年四月には寺村文四郎氏が齢四十九歳で、次いで明治二十八年には松宮外次郎氏が、両氏共カナダへ向かっている。これらの人の行動に刺激されて

「日本より何倍も金が儲かる」ことを夢に描いて次々とアメリカへの渡航者がふえてゆき、明治の中頃から大正にかけての移民ブームが起きたものと考えられる。

 野望に燃える当時の若者にとって、たしかに恰好な進撃目標であったと信じる。